しし座流星の色彩についての考察

今回のしし座流星群について「放つ光彩」について議論沸騰

その内容は

松本です
非常につまらない質問かもしれないのですが、流星の光跡は輻射点側が緑がかっていて、
その反対側が赤色に見えるのはドップラー効果によるものなのでしょうか。
それとも流星が燃えるときの温度によるスペクトルの違いによるものなのでしょうか。また他のことが原因なのでしょうか。

中谷です

写真だけでなく、明るい流星はたいてい前が赤っぽく、後ろに緑色の尾を引いてるように見えましたね、
今回のしし群。かなりはっきりした緑に見えたので、観測中に驚きの声があがってました。

しし群の流星は流星の中では対地速度が速い方ですが、
それでも70km/sec(光速の1/4000以下)ぐらいですからドップラー効果じゃないです。

流星の光は流星物質が燃えて出てるのじゃなくて、流星物質と大気の分子が高温のために電離してプラズマになり、
またイオンと電子が再結合するときに出るのです。だから輝線スペクトルです。

ちょっと「渡部潤一著 しし座流星群がやってくる」を調べたところ

赤    : ケイ素    Si I 634.7nm, 637.1nm
オレンジ : ナトリウム  Na I 589.6nm, 589.0nm
緑    : マグネシウム Mg I 518.4nm, 517.3nm

のようですね。Mgの輝線は「高速の流星で強い」と書いてあります。
しかし何で、前が赤で後ろが緑なんでしょう?

1.流星物質が、Siを芯にしてMgをまぶしたような構造をしてる?
2.大気中で減速してるから?

ようわかりませんです。1.と2.の違いは経路に沿ったスペクトルを見ると
わかるはずなんですが。

中谷です
・流星本体のSiやMgは発光時間が短く、1/30秒以下。
・酸素の輝線 O(F3) 558nm は上層大気中の酸素原子の三体衝突 O+O+O → O2+O* (O*は励起された酸素原子)
でO*が基底状態に戻るときの禁制遷移と呼ばれる寿命の長いもので、発光時間は1秒にもおよぶ。
また、高度95Km以下では発光しない。大気密度が濃くなってくると、酸素原子が光を出す前に他の原子との衝突で
エネルギーを失って光らなくなる消光現象(quenching)が起こるためだと考えられている。

だそうです。

なるほどね。酸素の輝線は高度が高いところだけで出るので、写真に撮ったとき後ろが緑なんですね。

時間的なズレだけだったら、写真には全部足しあわせた光が写るから、
前が赤っぽく、後が緑には写らないんですよね。それで、写真が出来たとき、
見た感じ(OIIIは一瞬遅れて再結合するんだなぁ)と違うなぁと思ったのです。